アクチュアリーの現状
試験難易度は高いが知名度は低い職業
日本では、試験難易度が高いと有名な職業に「弁護士」や「公認会計士」などがあります。
アクチュアリーも合格率で言えば公認会計士と大差はなく、難易度が高い資格の1つと言われていますが、一般的な知名度は「弁護士」や「公認会計士」よりも低いです。
会員数が少ない売り手市場
アクチュアリーという職業は難関試験に合格してから登録するため、全国的に見ても会員数は少なく2019年度の正会員は1,762人です。
そのため、会員に対し需要が多い売り手市場となっており、収入面や待遇面でもかなり魅力があると言えます。
アクチュアリー試験が難関なので、急激な会員増加はなく売り手市場が逆転することもしばらくないと言えるでしょう。
また、会社員として保険・年金事業に従事する以外にも、独立して外部企業のコンサルタントや監査法人を行ったり活躍の場も多く、キャリアプランの選択肢も幅広いです。
日本ではまだ少ない独立開業のアクチュアリーですが、業務の多様化に伴い独立するアクチュアリーも増えてくると予想されます。
アクチュアリーの需要
アクチュアリーの業務の中心である保険や年金は、将来的になくなることが想像しにくいです。
少子高齢化の進行や経済情勢の変化に伴い、将来を憂える人々の保険や年金への関心はより一層高まってきています。
そのような情勢の中、アクチュアリーは企業や業界の根幹を成しており、保険販売1つにとっても、「保険計理人」というアクチュアリーの承認なくして保険販売することはできません。
また、確率論や統計学といった数理のプロであるアクチュアリーは、その知識を保険や年金分野だけでなくさまざまな分野で活用して企業の業績を上げていくことを期待されています。
近年では、リスクが多様化している影響もあり、リスクマネジメント分野や経営コンサルティングに携わるアクチュアリーも増え、活躍の場を広げています。
活躍の場を広げている一方で、アクチュアリーの業務が複雑化していると言えます。
少子高齢化の影響で、保険商品の多様化や海外進出を狙う企業が増えることで、コミュニケーション能力や語学力が必要になってくる場合もあります。アクチュアリーとしての専門知識だけではなく、プラスアルファの知識やスキルを習得することで、今後のキャリアステップが大きく変わっていくのではないでしょうか。
アクチュアリーとAIの兼ね合い
既にアクチュアリー界にAIは存在している
アクチュアリーの業務は、確率論や統計学といった計算も含まれています。
こういった作業はAIの得意分野であり、将来アクチュアリーがAIに淘汰されてしまうのではないかという見方があります。
しかし、実際の現場では既にエクセルや統計ソフト、アクチュアリー用の分析ソフトなどAI化が進んでいます。
既にアクチュアリー界の中ではAIは身近なものとして存在しています。
AIでは補いきれないアクチュアリーの重要な役割
そのような中で、アクチュアリーが担う業務ははじき出した計算の正確性や合理性をいかにわかり易く説明できるかが重要になってきます。
なぜわかりやすく説明できるかが重要なのかと言うと、1つはアクチュアリーの知識のない経営陣に説明しなければならないことです。
2つ目は、新しい保険商品を販売するためには金融庁の事前許可が必要なためです。保険業界は規制産業であり、金融庁の厳しい監査を受けています。そのため、商品に対する価格設定やリスクをアクチュアリーが金融庁まで赴き説明しなければなりません。
金融庁で審査を担当する人もアクチュアリーの場合もありますが、そうでない場合もあります。
また、意見が対立したり、会社の経営意向に沿った説得にかなり不利な商品だった時にも、審査担当をあらゆるデータを用いて納得させなければなりません。
そういった対応をAIができるようになるまでには、かなりの年月が必要ではないでしょうか。
以上のことから、今ではアクチュアリー業界にAI技術は必要なものですが、取って代わるまでではないと言えるでしょう。
アクチュアリーの将来性
アクチュアリーが今後活躍していく場
広く知られるアクチュアリーの業務は、保険料や年金の掛金を算出し商品化することでした。しかし、近年では企業が「リスクマネジメント」の重要視する風潮が高まり、アクチュアリーはこの分野での活躍も期待されつつあります。
なぜアクチュアリーがリスクマネジメントの分野においての活躍が期待されているかと言うと、保険料などを算出する際には統計学や確率論の数理的な知識はもちろん、経済情勢や今後起こりうるリスクも見越して計算しています。
企業がプロジェクトを進行する過程で起こりうるリスクに対し戦略的に評価し、プロジェクトの価値を最大に生み出さなければなりません。
そういった点でアクチュアリーの能力は、会社経営にも役立つ専門家として保険業界以外からも需要が高まっています。
アクチュアリーが今後身につけるべき能力
プレゼンテーション能力
一般的にプレゼンテーションと言うと、相手にわかり易く説明することが重要になってきますが、アクチュアリーにおいてのプレゼンテーションは少し違います。
アクチュアリーは、企業という立場から自らが分析して算出した内容を提示し、相手にその内容を納得して了承を取り付けられるようにすることがプレゼンテーションと言えます。
英語力
アクチュアリーは業務のグローバル化に伴い、外国企業と業務を連携することも増えてきています。
自らの業務の幅を広げ、ステップアップしていくのであれば今後英語力は必須となり、外国企業に対し提案や折衝がこなせるようになっていくのが理想です。
ITの知識
近年では、アクチュアリーだけでなくどの分野においてもAIの台頭が懸念されている時代です。今後は業種を問わずAIとの融合が行われていくと考えられます。
よりITが身近になり、それに伴う知識も必要となってきます。
「データサイエンス」という言葉も近頃よく耳にするようになった言葉で、アクチュアリーに代わる職種として業界内に浸透しつつあります。
アクチュアリーであったとしてもITやAIに対する知識を蓄えることで、継続的にクライアントが獲得できると考えられます。